悩ましいイタリア語の学習

二拠点生活―京都編

昔かじったイタリア語をやり直している。

当時も「独学」で学習したのだが、今も独学でやっている。イタリア語は、自分の学生時代の専攻であったスペイン語と同じくラテン語から派生した言語(専門的にはロマンス語という)なので、共通点も多く、単語なども似ていて意味が推測できる。しかし、そこはそれ、別の言語なので異なる部分も多く、頭を抱えることもしばしばだ。

まず、その1つが、名詞の複数形である。

英語をはじめ、スペイン語も、フランス語、ポルトガル語も複数形は名詞に「s」をつけるだけだ。もちろん例外はあるが、基本は 「s」 だ。たとえば、「ネコ」という単語を例に挙げよう。

まとめてみると、下記の表のようになるが、表中で、「男性形」とか「女性形」とあるのは、「ネコの男性、女性」つまり「雄ネコ」、「雌ネコ」というわけだ。英語には名詞の性(ジェンダー)はないので、catだけになるが、ロマンス語ではそれぞれ「雄ネコ」、「雌ネコ」 の形がある(もちろん、「犬」にもある)。

ご覧のように、複数形にはすべて「s」がついている。これでこそ、「地球の言語」というものだ。しかも、スペイン語とポルトガル語ではその単語もまったく同じというのがうれしい。

ところが、イタリア語の複数をみてみよう。

そう、複数形なのに「s」がない!つまり、名詞を複数形にするには「s」は関係ないのである。

イタリア語を学習し始めたときにまず衝撃を受けるのが、この複数形である。しかも、イタリア語の名詞がすべて「-o」か「-a」の語尾で終わっているのなら単純に覚えればいいだけであるが、「-e」や「-ie」で終わるものもある。また、外来語の場合はどうするのか?というのもあって、単数から複数にするだけでも「一苦労」なのである。

とは言え、「〇〇ッティ」という音がなんとなくイタリア語らしい響きである。そうそう、「スパゲッティ」(spaghetti)もそうだ。これも 「〇〇ッティ」 で終わっているので複数形なのかなと調べてみると、spaghetto(スパゲット)という単語の複数形なのだが、その単語の意味は「1本のスパゲッティ」ということになり、なんだか「禅問答」のように堂々巡りになってしまうが、じゃあ、「スパゲット」とは何かというと

「紐、コード」を意味する単語spagoに「緩和・小さなもの」を表す接尾辞-ettoをつけてできた言葉

なのだとか。つまり、「紐のようなパスタ」というわけだ。

なるほど、スパゲットというのは「紐のようなパスタ」のことで、その複数が「スパゲッティ」なんだということになる。

こうしてみると、やはり、語学学習というものは、ちょっとした「トリビア」的な知識も身について楽しい。

しかし、そこは、1つの文化圏を形成している「言語」の世界であり、そんなに甘くはない。

ややこしいのは「名詞」とだけではない。「冠詞」もそうである。

ご存じのように、冠詞は名詞につけて使うわけだが、ロマンス語では、冠詞にもジェンダーと単数複数で使い分ける必要がある。たとえば、「1匹の雄ネコ」と「2匹の雌ネコ」ならつける冠詞もそれに「一致」させなければならない。

英語なら単純だ。不定冠詞ならaまたはan、定冠詞ならtheしかない。ところが、スペイン語では不定冠詞がun, una, unos, unas、定冠詞がel, la, los, lasの合計8種類となる。ましてや、イタリア語になると、単語の最初の音によって使い分けるので、定冠詞だけでもすでに 8種類 となり、不定冠詞を入れると合計12種類である。これだけでも、その複雑さが十分想像できるであろう。

PartiallyCranky60

生まれ故郷の田舎に戻り、土まみれになりながら実家の管理をしてしばらく暮らす。そして京都に戻り仕事や自分のメンテナンスをするという二拠点生活が定着してきた。あっという間に1か月過ぎ、1年が過ぎる。忙しい。とにかく忙しい。退屈しているヒマもない。綱渡りのような生活。大変だが、スリルがあるとも言える。もっと時間が欲しい。