 
可愛いピンクの桃の花があちこちの庭を明るく照らすよう咲くと、お店にも「ひなあられ」（甘い味のあられ）や「甘酒」（醗酵させたお米で作る甘い飲み物）のコーナーが設けられ、３月３日の「ひな祭り」（人形のお祭り）の準備が始まります。愛する娘のために美しい人形を飾る家も多く、気前の良いおじいさんおばあさんたちは、可愛くてたまらない孫娘のために豪華な人形セットを贈ります。それは、５段または７段からなる見事な飾りで、まばゆいばかりの宮中の着物を着た人形や手の込んだミニチュアの調度品などが並べられています。また、そこまでお金をかけられないとか、大きな飾りを置く場所がないという人のために、段や人形の数を減らしたシンプルなセットもあります。でも、なぜ、日本人は、３月３日に豪華な人形を飾るのでしょうか？ 
さて、「ひな人形」と呼ばれるこの飾りの起源ですが、２つの慣習が結びついたものとされています。一つには、「ひな遊び」と呼ばれた平安時代（794～1192）の女の子の遊びです。時代や国、地域に関係なく小さな子供は人形遊びが好きですね。それは、裕福な家でも貧しい家でも同じですが、当時の貴族の子供たちは、今の「バービーハウス」のようなセットを持っていたようです。もっとも、「ハウス」とは言え、貴族の家ですから、宮殿のような家だったことでしょう。さらに、２つめは何かというと、昔は、今と違って医学や技術も進歩していません。幼児の死亡率が高く、病気などの不幸に見舞われて死んでしまうことも多かったのです。そこで、子供をなんとか守りたいと願う親が、人形を身代わりにし、子供に降りかかる災いを防ごうとしたのです。子供の枕元に人形を置いたり、人形を川に流す「流しびな」の習慣も見られました。 
では、「ひな人形」の飾りを詳しく見てみましょう。最も豪華なものは７段飾りのひな人形ですが、以下のような構成になっています。・最上段：宮中のカップル（天皇・皇后がモデル） ・二段目：三人官女（宮中に仕える女中） ・三段目：五人囃子（伝統音楽を演奏） ・四段目：右大臣と左大臣 ・五段目：従者や護衛 ・六段目と七段目：嫁入り道具としての調度品 豪華絢爛のひな飾りですが、これを飾るのは３月３日（ちなみに休日ではありません）を中心とするひな祭りシーズンだけです。また、女の子のための飾りで、男の子のために飾ることはありません（伝統的にそうなっているという意味です）。じゃあ男の子はどうするのかと言うと、５月５日の「子供の日」（休日です）を彩る「鯉のぼり」があります。 最後に、「ひな人形」の取り扱いについて注意事項を一つ。それは、「ひな祭りが終わったらさっさと片づける」ということです。なぜかと言うと、身代わりとして災いや悪運をたっぷり吸いこんだ人形をいつまでも置いていても良いことはありませんね。その持ち主である女の子の結婚が遅くなるのだという言い伝えがあります。昔のことですから、結婚しないというのは女性にとって「災難」だと考えられていたからです。
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