翻訳に基づいた「通弁」クリエイティブ・ライティング

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できれば読みたくない!違和感たっぷりの文章例

その6:ワンパターンあいさつ文の退屈な翻訳(日→英)

ここでは、よくある「社長あいさつ」という想定の内容の翻訳例です(内容は架空です)。原文のあいさつ文も日本ではよく見られるパターンの内容であり、翻訳文としても間違いはないのですが、ワンパターンの文章構造が多く退屈なものになっています。

NG例文

CEO Greetings

In today’s society, where we face various problems such as environmental issues, the declining birthrate, and population aging, the existing values ​​and ways of thinking are becoming less and less applicable. In such a situation, to think about what customers really need and continue to provide them, a significant paradigm shift is required in how companies and businesses operate.

We at Free Entity Co., Ltd. have sincerely addressed various needs based on the motto “Closer to our customers” and have delivered numerous high-quality products and services. We are happy to announce that this year marks our 30th anniversary. We want to offer our gratitude to our customers and local communities for their understanding and support, which we believe have been indispensable to our growth.

We want to start anew with a refreshed mind and determination toward further growth as we celebrate our 30th anniversary. We will strive as one to ensure that our products and services bring the utmost relief and comfort to our customers’ lives so that they can say, “We were right to choose Free Entity products.”

We are looking forward to your continued support and patronage.


原文

社長あいさつ

環境問題をはじめ少子高齢化などの様々な問題を抱える現代社会において、これまでの価値観や考え方がますます通用しなくなってきています。そのような状況にあって、お客様にとって本当に必要なものは何かを考え、それを提供し続けるためには、企業やビジネスのあり方においても、大きなパラダイムシフトが求められています。

私ども株式会社フリーエンティティは、「お客様により近く」をモットーに様々なニーズに真摯に向き合い、数々の高品質の製品やサービスをお届けしてまいりました。お陰様で、本年は30周年を迎えます。これもひとえにお客様や地域の皆様のご理解、ご支援の賜物と感謝申し上げます。

30周年を迎えるにあたり、気持も新たにさらなる発展をめざしたいと考えております。私たちの製品やサービスがお客様の生活に最高の安らぎと快適さをもたらし、「フリーエンティティの製品を買ってよかった」と言っていただけるよう、全社一丸となり努力邁進する所存です。

今後ともより一層のご支援とご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。


解説
余談ですが、日本人はまじめなのか(まじめですね)、たいていの会社紹介パンフやサイトには「社長あいさつ」なるものがあり、それも判で押したように同じようなパターンや内容で書かれています。「人並みの内容を掲載しよう」とすればつい「人がやるようにやっておけばいい」という横並び的な発想になるのかもしれません。しかし、どこの企業もそれなりの優れた技術や製品・サービスを持っているはずです。「他と異なること」を恐れずにもっとユニークで他の企業と差別化できるようなメッセージを発信して欲しいものです。

それはさておき、翻訳文を見てみると一目瞭然とも言えますが、最初のパラグラフでは、In today’s societyIn such a situation といった In で始まる文章になっています。さらに、次のパラグラフからはすべての文章がWe で始まる構文になっています。間違いではないのですが、We...、We...、We... となると単調で変化がなく読んでいて非常に退屈です。しかも、退屈なのを我慢して読んだところで、得られる情報はどこにでもあるような「お決まり」の内容です。

「読まない」という選択肢のあるコンテンツのライティングのところでも述べていますが、たいていの場合、一般消費者として、ある企業のサイトや紹介パンフレットなどの「社長のあいさつ」は「あえて読む必要のないもの」だと言えます。商品に興味があるのなら直接商品ページに行けばいいわけで、退屈なメッセージなどは読んでもらえそうにはありません。

「どうせ読まないだろうから」ということで、そういった「あいさつ」や「メッセージ」のたぐいは掲載しないという方法もあるかもしれません。しかし、せっかく自社のサイトに訪れてもらったわけです。そのチャンスをムダにするのはもったいないですよね。

ちなみに、これはダイレクトメールの話ですが、最近では、従来のような「マスメディア」を思わせるようなアプローチよりも、「鈴木花子さんへ――山田桜子より」などという個人名を出したパーソナルタッチのメッセージが増えてきました。文字も「手書き」あるいは手書き風の書体を使うなど「手作り感」を演出しています。これも、「読んでもらえないものをいかに読んでもらうか」、「他社にはないユニークさアピールしよう」という工夫の1つとも言えます。果たしてどれほどの効果があるのかはわかりませんが、受け取る側としては注意を引かれますし、捨てないで残しておいてもいいかなという気持ちになることもあります。

いかに内容を読んでもらうか、読んでもらって少しでも記憶に残る内容にするにはどうすればいいかということなのです。もちろん、日本語の原文自体がもっとおもしろい内容であることが望ましいのですが、英文化する段階では、それは現実的に難しいと思われます。そこで、ここではそれを英文化する際に、少しでも英文ライティングとして読みやすく興味を持ってもらえるものに近づけるという前提で考えてみたいと思います。それには、言うまでもなく、単なる翻訳を超えたアプローチが必要になってきます。

まず、上で挙げた日本語の原文において、最も重要な部分はどこかを考えてみましょう。

冒頭のパラグラフは、いわゆる「起承転結」の「起」に該当する部分だと言えますが、日本語の場合、いきなり本論に入るのにためらいがあるのか、たいていこういう「前書き」から始まります。

一方、英文ライティングの場合、このような「前書き」はあえて必要ではありません。むしろ、「わかり切ったことをわざわざ書くのか」とか、「だからどうなんだ?」ということにもなりかねません。それよりも、何か注意を引くような気の利いたイントロを持ってくるほうがどんなに効果的か知れません。

では、「いきなり本論」の「本論」とはどの部分かというと、例文の原文ではこれもつかみどころがないですね。「ここをアピールしたい!」というメッセージとしての「核」が明確になっていないからです。

あえて抽出するならば、「30周年」「お客様により近く」「お客様の生活に最高の安らぎと快適さ」という3つの要素が挙げられます。これは日本語の原文において本来必要なことなのですが、この3つの要素を組み込んで、自社ならではのユニークなセールスコンセプトを設定し、それをライティング全体を通じて論理的かつ効果的に表現していくわけです。

たとえば、多少強引ですが、「我が社は30年の経験を活かして、お客様の視点から発想した製品やサービスを通して、お客様の生活に最高の安らぎと快適さを提供します」というふうに考えることができます。このコンセプトをロジックの流れに乗せながら展開していくのがライティングです。

その結果、このメッセージが読む人に明確に伝わり、「この会社はお客の発想で製品やサービスを作り、30年の歴史がある。ここで言う最高の安らぎと快適さとは何か?」というさらなる興味につながるかもしれません。この「最高の安らぎと快適さ」は具体的に定義することが望ましいのですが、無理であればそこを「ミステリー部分」として好奇心をくすぐる方法も考えられます。

翻訳に基づいたライティング例
CEO Greetings

What is the best form of comfort for you? We know it varies depending on the individual, and that is why our motto says, "Closer to our customers." Based on this guidepost, we have launched numerous Free Entity products and services in the market for as many as 30 years.

Here, let us remind you of the harsh situation surrounding today's society. Challenging problems such as environmental issues, the declining birthrate, and population aging are rapidly making traditional values and ideas obsolete. Under such conditions, a significant paradigm shift in operation is a must for many businesses, who may lose themselves in finding what their customers really need and how they continuously respond to such needs.

However, we at Free Entity are very optimistic. Having sincerely addressed diverse customer needs by remaining closer to them, we are confident that our customers would continue to say that they are happy to have chosen our products.

Lastly, this year marks our 30th anniversary. Celebrating the occasion, we'd like to offer our hearty thanks to our customers and local communities for their kind support, indispensable to our growth. Starting anew with a refreshed mind and determination to go a step further, we will continuously dedicate ourselves to your best relaxation experience.




UniformityIsBeautiful
(画像はイメージです。)