こんなに違う古英語の文法 (5)
文字が違う、スペルが違う
今でこそ西洋の文字はアルファベットと相場が決まっていますが、古英語の初期には、ゲルマン語と同様に「ルーン文字」(runes) という文字が使われていました。ルーン文字とは、鉄器時代から魔術や占いにも使われてきた文字ですが、このアルファベット(文字体系)を使って記録をしていました。ルーン文字についての詳しい説明は、神秘の文字ルーン・アルファベットをご覧ください。
さて、現代のような A, B, C... のアルファベットはラテン語から来たものですが、このラテン語由来のアルファベットが使われるようになったのは9世紀ごろで、アイルランドからのキリスト教伝道者がもたらしたと言われています。
古英語で入ってきたアルファベットは、当然のことながら、現代ものとは異なります。古英語のアルファベットについては、古英語のアルファベットのほうで詳しく説明していますので、そちらをごらんください。
それでは、実際の古英語のスペルの違いを見てみましょう。古英語の語彙はほとんど失われているのですが、ここでは、比較的わかりやすいものを選んでいます。
þa ondswarede he, ond cwæð, 'Ne con ic noht singan; ond ic for þonof peossum |
Then answered he, and said, 'Nor can I nothing sing; and I for that from this |
gebeorscipe ut eode ond hider gewat, for þon ic naht singan ne cuðe. |
banquet out went and hither came, because I nothing to sing not knew how. |
単語自体がまったく異なるものもありますが、なんとなく推測できるものを比較すると次のようになります。
古英語 |
現代英語 |
説明 |
ondswarede |
answered |
「答える」の過去形 |
ond |
and |
「そして」 |
Ne |
Nor |
否定を意味する |
con |
can |
「~できる」 |
ic |
I |
「私」(第1人称単数代名詞) |
noht, naht |
nothing |
「何もない」 |
singan |
sing |
「歌う」の原形 |
hider |
hither |
「こちらへ」 |
スペルというより単語自体が違いますが、何となく古英語の雰囲気がわかりますね。
語彙が全然違う
現代人が古英語を見ても、何が何だかわからない理由のひとつはその語彙の違いです。なんでも古英語期に使われていた語彙の8割が、中英語期の終わりには消滅していたと言われています。つまり、大半の単語が入れ替わってしまっていたということになります。では、古英語にはいったいどんな単語があったのか?詳しくは、消滅した古い単語たちをご覧ください。
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