物好きの食べ物「花漬け」

There is no accounting for tastes.

晴れ、風が強く寒い日

そもそも、蓼(たで)とは何なのか?調べてみると、独特の香りと辛味を持ち、香辛料として薬味や刺身のつまなどに使われるらしい。念のため、検索エンジンで画像を確認してみた。なるほど、これなら見たことがある(食べたこともあるはずだ)。

これを食べる「虫」は物好きだということなんだが、人間にとっては、刺身のつまにつくほどなので、さして「物好き」ということでもないだろう。ちなみに、人間にとって「物好き」と言える食べ物の一つが、この「花漬け」だと思う。

「花」は「花」でも菜の花の漬物なのだが、菜の花を丸ごと漬物にしたもので、とにかく臭いのである。味も酸っぱいだけで、どこが美味しいんだろうと思ったのが、最初に食べたときの感想だった。なにを好んでこんなものが美味しいと思うのか、まさに「蓼食う虫も好き好き」だと思ったものだ。私の配偶者の実家は「食べること」をとことん楽しむ家系なので、いろいろとめずらしいものを食べさせてもらっているが、この「花漬け」もそうである。

さて、この臭くて酸っぱいだけの「花漬け」であったが、acquired taste「覚えた味」というのか、いつの間にか「好物」の一つになってしまったのだ。「酸っぱいだけ」と思っていた味にも、妙味や風味がぎっしり詰まっていることに気づいた。そしてそれらが、口のなかで処理される段階に応じて微妙に変化する「発酵臭」と独特のハーモニーを奏でるわけである。

しかし、「花漬け」ならどれでもいいというわけではない。市販のものもあるが、マイルドでどこか物足りない。我が家の「花漬け」は、京都の松ヶ崎にあるとある農家で作られているもので、毎年注文して取りに行くのである。今年もシーズン到来、さっそく先日取りに行ってきたところだ。

しかし、残念なことに、昔は「花漬け」を作っていた農家もたくさんあったようだが、いまではだんだん数少なくなり、いつもお願いしているところも、現役でがんばっているおばあちゃんがいなくなれば続けていくことはできないとのこと。その家独自のレシピもあるだろうが、漬ける時期や取り出す時期(途中で確認はできないのだとか)など、洗練されたさじ加減が必要になってくるのだろう。

それにしても、手作りの伝統が失われていくのは寂しい限りである。

PartiallyCranky60

生まれ故郷の田舎に戻り、土まみれになりながら実家の管理をしてしばらく暮らす。そして京都に戻り仕事や自分のメンテナンスをするという二拠点生活が定着してきた。あっという間に1か月過ぎ、1年が過ぎる。忙しい。とにかく忙しい。退屈しているヒマもない。綱渡りのような生活。大変だが、スリルがあるとも言える。もっと時間が欲しい。