ローマ化とラテン語 (1)
ブリテン島のローマ化
ローマ帝国 (Roman Empire) の占領によって、現在のイングランドとウェールズのある島の南西部では、これまでのケルト文化からより洗練されたローマ文化への移行が見られ、街並みや道路、建物などの近代化が進みました。人々の考え方や生活様式も上流階級を中心にローマ化されていきます。
また、言語においても、同じく島の南西部では、ローマ人の話すラテン語による落書きや石などに刻まれた文字が残されており、ラテン語がかなり普及していたのではないかと言われています。
ラテン語とは
ラテン語は、ケルト語同様にインド・ヨーロッパ語族 (Indo-European languages) に属する言語です。紀元前1000年頃に、北ヨーロッパからテベレ川 (The Tiber) 流域のラティウム (Latium) に移民してきた人々によってもたらされたのがその起源で、その後、中央イタリアのエトルリア語 (Etruscan)、北イタリアのケルト語、ギリシア語の影響を受けながら発展します。かっては、ローマ帝国の拡大とともに、地中海沿岸を中心とするヨーロッパ各地に広がりましたが、現在では、バチカンや学術的な命名法などにおいて使用されるのみとなっています。しかし、ローマ帝国崩壊後、口語体である俗ラテン語 (Vulgar Latin) は、イタリア語をはじめ、フランス語、スペイン語、ポルトガル語などが生まれる母体となり、言語としての意義は大きなものがあります。
ラテン語の特徴
ラテン語には、以下のような特徴があげられます。
単語の一部がさまざまに活用する屈折言語 (inflected language) である
男性、女性、中性の3つの名詞の性 (grammatical gender) を持つ
男性名詞 |
女性名詞 |
中性名詞 |
例)flos 「花」 |
例)rosa 「バラ」 |
例)bellum 「戦争」 |
数 (number) には単数 (singular) と複数 (plural) の2種類があり、人称には、1人称 (1st person)、2人称 (2nd person)、3人称 (3rd person) がある
時称(時制)(tense) には、現在 (present)、未完了過去 (imperfect)、未来 (future)、現在完了 (perfect)、過去完了 (pluperfect)、未来完了 (future perfect) の6つがある
法 (mood) には、直説法 (indicative mood)、接続法 (subjunctive mood)、命令法 (imperative mood)、不定法 (infinitive gender) の4つがある
直説法 |
事実を客観的に述べる |
接続法 |
話し手の願望や意志、可能性、不確実性などを述べる |
命令法 |
命令や要求、禁止や許可などを述べる |
不定法 |
活用しない動詞の原形(「~すること」という意味で使う) |
態 (voice) には、能動態 (active voice) と受動態 (passive voice) がある
動詞は、単数と複数、人称、法、態、時制によって語尾が変化する
(下記はほんの一例)
例:直説法・能動態現在 amāre 「愛する」
|
人称 |
単数 |
複数 |
1人称 |
私は愛する amō |
我々は愛する amāmus |
2人称 |
あなたは愛する amās |
あなたたちは愛する amātis |
3人称 |
彼/彼女/それは愛する amat |
彼ら/彼女ら/それらは愛する amant |
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