英語の起源ゲルマン語 (2)
北ゲルマン語群
次に、ゲルマン祖語 (Proto-German) から分岐した3つの語群のうち、北ゲルマン語 (North Germans) についてみてみましょう。この語群はスウェーデン南部を中心に発達します。まずノルド祖語 (Proto-Norse) から古ノルド語 (Old Norse) が形成されたのが800年ごろで、そこから古西ノルド語 (Old West Norse) と古東ノルド語 (Old East Norse) に枝分かれします。他の語群にくらべると10世紀ごろまで「統一」の状態を保っていたため、言語間での共通点が多く残っていると言われます。なかでも、アイスランド語は、古ノルド語の文法をほとんどそのまま引きついているようです。こうして、古西ノルド語からはアイスランド語、ノルウェー語などの言語が生まれ、古東ノルド語はスウェーデン語、デンマーク語へと発展していきます。
東ゲルマン語群
東ゲルマン語 (East Germans) からは、ゴート語 (Gothic)、ヴァンダル語 (Vandalic)、ブルグント語 (Burgundian) などが生まれますが、民族大移動時代 (Migration Period) の後期には衰退していきます。7世紀ごろには他の言語に吸収され、クリミアゴート語のみが生き残りますが、18世紀には絶滅してしまいます。
ゲルマン語の文字
さて、ゲルマン人はどんな文字を使っていたのでしょうか?――「そりゃアルファベットだろ?」と思うかもしれませんね。確かにアルファベットには違ないのですが、アルファベットはどこから?でも書いているように、アルファベットと言っても「ABC」のアルファベットではありません。こういった「ABC」のアルファベットは、ラテン語から入ったアルファベットなのですが、最初からこのアルファベットが使われていたわけではありません。では、どんな文字が使われていたかというと、ルーン (runes) と呼ばれる文字が使われていました。詳しくは、神秘の文字ルーン・アルファベットを参照してください。
ゲルマン語の主な特徴
では、ゲルマン語の特徴についてみてみましょう。枝分かれしたそれぞれの言語によっても異なるため、ここではゲルマン祖語を中心に説明します。
単語の一部がさまざまに活用する屈折言語 (inflected language) である
男性、女性、中性の3つの名詞の性 (grammatical gender) を持つ
男性名詞 |
女性名詞 |
中性名詞 |
例)wulfaz 「オオカミ」 |
例)gebō 「バラ」 |
例)mari 「海」 |
表中の単語はすべて想定上の単語であり、実際に存在するものではありません。
数 (number) には単数 (singular)、複数 (plural) に加えて双数 (dual) の3種類があり、人称には、1人称 (1st person)、2人称 (2nd person)、3人称 (3rd person) がある
時称(時制)(tense) には、現在 (present) と過去 (past) の2つがある
法 (mood) には、直説法 (indicative mood) 、接続法 (subjunctive mood) 、命令法 (imperative mood) の3つがある
動詞は、単数と複数と双数、人称、法、態、時制によって語尾が変化する
(下記はほんの一例)
例:sagjaną「言う」の現在形活用
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-- |
直接法 |
接続法 |
命令法 |
能動態 |
受動態 |
能動態 |
受動態 |
能動態 |
1人称単数 |
sagjō; sagjôi? |
sagjai? |
sagjaų |
??? |
– |
2人称単数 |
sagaisi |
sagjasai |
sagjais |
sagjaisau? |
sagai? |
3人称単数 |
sagaiþi |
sagjaþai |
sagjai |
sagjaiþau? |
sagjaþau |
1人称双数 |
sagjōs (?) |
sagjanþai |
sagjaiw |
sagjainþau? |
– |
2人称双数 |
sagjaþiz (?) |
sagjaiþiz (?) |
sagjaþiz? |
1人称複数 |
sagjamaz |
sagjaim |
– |
2人称複数 |
sagaiþ |
sagjaiþ |
sagaiþ |
3人称複数 |
sagjanþi |
sagjain |
sagjanþau |
表中の単語はすべて想定上の単語であり、実際に存在するものではありません。
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