Last update May 29, 2021

英語の起源ゲルマン語 (2)

北ゲルマン語群

次に、ゲルマン祖語 (Proto-German) から分岐した3つの語群のうち、北ゲルマン語 (North Germans) についてみてみましょう。この語群はスウェーデン南部を中心に発達します。まずノルド祖語 (Proto-Norse) から古ノルド語 (Old Norse) が形成されたのが800年ごろで、そこから古西ノルド語 (Old West Norse) と古東ノルド語 (Old East Norse) に枝分かれします。他の語群にくらべると10世紀ごろまで「統一」の状態を保っていたため、言語間での共通点が多く残っていると言われます。なかでも、アイスランド語は、古ノルド語の文法をほとんどそのまま引きついているようです。こうして、古西ノルド語からはアイスランド語、ノルウェー語などの言語が生まれ、古東ノルド語はスウェーデン語、デンマーク語へと発展していきます。

東ゲルマン語群

東ゲルマン語 (East Germans) からは、ゴート語 (Gothic)、ヴァンダル語 (Vandalic)、ブルグント語 (Burgundian) などが生まれますが、民族大移動時代 (Migration Period) の後期には衰退していきます。7世紀ごろには他の言語に吸収され、クリミアゴート語のみが生き残りますが、18世紀には絶滅してしまいます。

ゲルマン語の文字

さて、ゲルマン人はどんな文字を使っていたのでしょうか?――「そりゃアルファベットだろ?」と思うかもしれませんね。確かにアルファベットには違ないのですが、アルファベットはどこから?でも書いているように、アルファベットと言っても「ABC」のアルファベットではありません。こういった「ABC」のアルファベットは、ラテン語から入ったアルファベットなのですが、最初からこのアルファベットが使われていたわけではありません。では、どんな文字が使われていたかというと、ルーン (runes) と呼ばれる文字が使われていました。詳しくは、神秘の文字ルーン・アルファベットを参照してください。

ゲルマン語の主な特徴

では、ゲルマン語の特徴についてみてみましょう。枝分かれしたそれぞれの言語によっても異なるため、ここではゲルマン祖語を中心に説明します。

単語の一部がさまざまに活用する屈折言語 (inflected language) である

男性、女性、中性の3つの名詞の性 (grammatical gender) を持つ

男性名詞 女性名詞 中性名詞
例)wulfaz 「オオカミ」 例)gebō 「バラ」 例)mari 「海」
表中の単語はすべて想定上の単語であり、実際に存在するものではありません。

(number) には単数 (singular)、複数 (plural) に加えて双数 (dual) の3種類があり、人称には、1人称 (1st person)、2人称 (2nd person)、3人称 (3rd person) がある

時称(時制)(tense) には、現在 (present) と過去 (past) の2つがある

(mood) には、直説法 (indicative mood) 、接続法 (subjunctive mood) 、命令法 (imperative mood) の3つがある

動詞は、単数と複数と双数、人称、法、態、時制によって語尾が変化する
(下記はほんの一例)

例:sagjaną「言う」の現在形活用
-- 直接法 接続法 命令法
能動態 受動態 能動態 受動態 能動態
1人称単数 sag; sagjôi? sagjai? sagjaų ???
2人称単数 sagaisi sagjasai sagjais sagjaisau? sagai?
3人称単数 sagaiþi sagjaþai sagjai sagjaiþau? sagjaþau
1人称双数 sagjōs (?) sagjanþai sagjaiw sagjainþau?
2人称双数 sagjaþiz (?) sagjaiþiz (?) sagjaþiz?
1人称複数 sagjamaz sagjaim
2人称複数 sagaiþ sagjaiþ sagaiþ
3人称複数 sagjanþi sagjain sagjanþau
表中の単語はすべて想定上の単語であり、実際に存在するものではありません。



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