「めざせ!コスト半減」などのスローガンを掲げて、どの企業でも徹底したコスト管理が求められている厳しい世の中です。そんな状況にあって、「クリエイティブ翻訳」にはコストダウンを実施する余地はないのか、ということになります。
その疑問に対しては、コストダウンできる部分もあり、できない部分もある―としかお答えできないと思います。
どんな業務や作業にも「人間系」の部分と「機械系」の部分があります。「人間系」とは、言うまでもなく、創造性、独創性、感性、知性などを基にした人間が介在しなければできない部分で、ものづくりで言うならば「職人芸」なども含まれるでしょう。一方、機械系は、平準化・マニュアル化された単純作業の部分で、一定のトレーニングをもとに誰にでも同じようにできる(できなければならない)部分でもあります。
そして、当たり前のことですが、コストダウンという取り組みが実現しやすいのは、後者の「機械系」の部分です。この部分には、文字通り、先進技術を適用するなどの機械化ができるからです。しかし、人間系のコストダウンはそれほど簡単ではありません。
この人間系の部分を無理にでもコストダウンしようと思えば、①国外などにより安い人材を求める、②利益を度外視してやってもらう、という2つの方法が考えられますが、①は将来的に安定したやり方ではなく、国際間取引におけるリスクも伴います。また、②はビジネスではなく、ボランティアになりますので、健全なビジネス関係が成立しません。
となると、いかにして、人間系から機械系へのルートを作り、そこに乗せるかということになってきます。
どんな業務や作業であれ、技術の発達とともに人間系の部分から機械系の部分への移行が進み、昔は人間が行っていたことがどんどん機械にもできるようになってきます。つまり、この人間系から機械系へ移行する過程においてコストダウンの大きな可能性があるわけです。しかし、同時に、人間が利用する商品やサービスである限り、コアとなる人間系もまったくゼロにはならないだろうとも思うのです。
ですから、人間系の部分を付加価値として、それなりにふさわしい対価をきちんと求める代わりに、コストダウンの可能な機械系の部分をいかに増やしていくかを人間系で考え、創意工夫していくのが企業努力であり、望ましいビジネスのやり方ではないかと思うのです。
話を戻しますと、「クリエイティブ翻訳」は大ざっぱな言い方をしますと、人間系の作業です。
しかし、人間の性格にも「○○型人間」といった分類やパターン化がある程度は可能です。創造性や感性のような数値化や定量化が不可能であると思われる部分であっても、そこには必ず、何らかの発想や思考のパターンもあると思うのです。その部分をうまく処理し、機械系へと移していくことでコストダウンの可能性が出てきます。そして、将来的に、ニューロコンピュータのような技術が可能になったとき、人間のクリエイティブな作業も限りなくコスト大幅削減への道を歩み始めるのではないかと思います。