「クリエイティブ翻訳」におけるコストダウン (1)

前回の記事でも述べましたが、「クリエイティブ翻訳」の過程そのものは人間が考える仕事ですから、コストダウンできる部分はそれほど大きくはありません。しかし、「創造的な生業にコストダウンなど無縁だ」というと、これはもう芸術の世界になってしまいます。ではなくて、やはりビジネスですから、いかに人間系を機械系へシフトすることでコストダウンの可能性を模索するかという視点も必要だと考えています。

今回は、クリエイティブ翻訳によるプロジェクトを進めるうえで、実践している効率化アップの取り組みをご紹介します。

まず、独創性や感性が求められる翻訳ライティングの部分ですが、これは、発想や考える過程そのものを機械系で支援することで、考えがまとまりやすくなり、作業の効率化・スピードアップが図れる場合があります。時間と手間が少なくなれば、当然人件費を削減することもでき、コストダウンへとつながるわけです。

たとえ独創的とは言え、世の中には100パーセント「オリジナル」と言えるものは存在しないのではないかと思います。どんな独創的な作品であっても、必ずそこに、それを創造せしめた源(みなもと)となる何かがあるはずです。それは、以前にみた絵画かもしれないし、幼い頃の体験や、どこかでみた美しい風景かもしれません。意識しているかいないかにかかわらず、そういった原体験が素になってインスピレーションが生まれてくるものだと思います。

ということから、「発想・思考」系の効率化のカギは、インスピレーションを与える材料の引き出しをいかに機械で管理するかです。とは言え、美術館でみた絵画すべての画像をパソコンに落とし込むというのも現実的ではありませんし、脳のなかの「記憶・思い出」に関連する部分を取り出してマイクロチップに… などという技術もありませんので、言語表現でのレベルの話になります。

人間系だけになかなか実用レベルに達するのはむずかしいのですが、自分自身の取り組みとして、業界別用語集はもちろん、口語的な言い回し、表現集、リズムの似通った単語集、また、英語のライティングでは(専門用語を除いて)同じ単語の繰り返しを嫌いますので、同義語集なども含めた「インスピレーション」支援のための簡易データベースを構築中です。

しかしながら、多分に試行錯誤の部分が多いため、現在でも構築しながら活用中ですが、正直なところ、それほど目立った効果を上げていないのも事実です。また、かなりクリエイティブ度の高いものには安易に適用できる方法ではないことも付け加えておきます。

次回は、実際に効果を上げているマニュアルなどのクリエイティブ翻訳のコストダウンについて述べたいと思います。