クリエイティブ業界とは(1)

「クリエイティブ業界」ってどんな業界?

ということですが、文字通り、日々クリエイティブなことをやっている業界ということが言えます。また、「クリエイティビティ」、「キャッチー」、「インパクト」、「コンセプト」などの言葉をよく使う業界でもあります。とは言え、朝起きて歯を磨く、「ん?この歯ブラシは歯へのインパクトが足りんぞ」とか、「このトーストの焼き方のコンセプトは何だ?」などというのでは日常生活を送るのも疲れてしまいます。

しかしながら、「表面はカリカリ、中身はふっくら…。よし、今度のパンフレットのデザイン・コンセプトはこれで行こう!」など、仕事以外のことをやっていても、ふと、携わっている仕事へのインスピレーションが沸くといった世界でもあります。言ってみれば、(どんな仕事もそうなんですが)、常に創造性が活性化されている状態が当たり前になっているため、仕事とプライベートの境界がブレンドしているような人たち(クリエイターと呼びます)が、自分たちの持てる創造性やアイデアをデザイン、映像、音楽、文章という手段で表現する業界のことです。

「クリエイティブ業界」についての詳しい定義は、「通弁」ホームページで説明しています。

https://www.rondely.com/tuben/column/cl7.htm

一般的にクリエイターと称する人間は、品質に対するこだわりがあり、日々自分の表現能力を高めようと精進努力している人種であるとも言えます。だからこそ、プライベートとの境目がなくなってくるのです。そして、こうしたクリエイターとして誇りを持っている人たちにとって致命的なのは、「あの人はクリエイターじゃない」と言われること。

さらに、クリエイターじゃないと言われる、その定義とは、

●品質に対するこだわりがなく、お金だけで仕事をする人
●自分のスキルや才能ではなく、「ごろにゃん」して仕事をもらってくる人
●表現アイデアを考えるときに、出来合いの「広告実例集」などから適当に選んで、アレンジした案を出す人
●仕事仲間を下請けとしか思えない人、ただで仕事をやらせる人
●クライアントさんの意向をきちんと伝えられない(伝えない)人

というふうな点があげられるかと思います。もっとも、クリエイティブとは言え、ビジネスですから、お金で仕事をする場合も「ごろにゃん」する場合もときには必要ですが、常にこういった態度がデフォルトになっている人のことを言います。

また、こういった定義は人によっても異なる部分もあるかと思います。世の中、いろんな人によって成り立っているわけで、どんな業界にも言えることですが、同じタイプだけでもうまく行きません。「クリエイターじゃない」的な人々もいて、また、そういう人たちが逆に「クリエイティブもわかるが、その前にビジネスなんだ」などと言いながら、異なるタイプの人間が協調したり、ぶつかり合ったりしながら、ざっくり生きているのがこの業界です。

息抜きにオンラインゲーム

ちょっと「息抜き」というときに使うのがオンラインゲーム。オンラインゲームと言っても、いわゆるMMORPGなどのロールプレイング・ゲームではなく、もっぱらMSNのサイトで提供されている、一人でぼちぼちと遊ぶ類のものを楽しんでいますが、シンプル、かつ無料で手軽というのが気に入ってます。
http://zone.msn.com/en/root/gamebrowser.htm?playmode=1&intgid=hp_Nav_3
なかでも、Bejeweled、Jewel Quest、Zuma、Luxorといった、単純で頭を使わない内容のもの(そうでなければ息抜きになりません)がお気に入りです。
BejeweledとJewel Questは、いずれもゲームのネーミングに「Jewel」という単語が入っていることから、カラフルな宝石のようなコマを左右上下で並べ替えて、同じコマを使った3つ以上の続きのセットを作るというパズル感覚のゲームです。同じコマが3つ以上そろうとそのセットが削除され、その上にあるコマがシフトして降りてくるというしくみになっています。
Bejeweledでは、一定以上のコマをクリアすると、得点とレベルが上がっていきますが、プレイヤーが「良い動き」をすると、Excellent!とかIncredible!といった掛け声が入り、先生に褒めてもらっているようでちょっと得意になったりします(単純ですが)。また、コマを移動させるときの効果音とクリック感で「さくさく」した爽快感が楽しめます。
また、Jewel Questのほうは、第三段階目くらいになると、いくつかマスキングされている升目が出てきて、その周辺のコマをある程度クリアしなければ、そのマスキングが排除されません。このマスキングが取り除かれるときの音と反応の仕方が心地良く、ほどよい「達成感」を刺激してくれます。
一方、Zuma、Luxorのほうは、出口からぞくぞくと出てくる玉の列を排除していくというゲームで、2つ以上続いている同じ色の玉に攻撃用の同じ色の玉を当てることで取り除くことができるというルールです。Zumaのほうは、中南米の古代帝国のイメージ、Luxorはエジプトのピラミッドをモデルにしたデザイン。どちらも、出てきた玉がレールの最終点である穴に到達してしまうまでに、玉をすべて排除しないと、「ドドーッ」という音をたててすべての玉が「奈落の底」へ落ちていくということになっています。
単純で頭を使わないとは言え、ある程度の戦略が必要になります。次から次へと出てくる玉の軍団、ところが、攻撃用に出てくる玉の色は決まっていますから、打ちたいところに打ちたい色がないというようなことになってしまうわけです。そこで、効率的な打ち方を考えたり、コインを打つなどして、特殊な「武器」をゲットすることも必要になります。
とくに、Luxorのほうは、一列を消してもまた次が出てくるという具合で、けっこう時間もかかり、肩や腕が疲れることもあります。ほんの息抜きのつもりが、「あ!しまった、もうこんな時間だ」なんていけませんね。もちろん、私も忙しいときにはやりません。
それにしても、こういったゲームをプレイしていて思うのは、エンタテイメントのツールとして、なるほど「よくできている」ということです。デザインや音楽はもちろんのこと、プレイヤーが何か動作を起こしたときのゲームツール側のレスポンスやリアクション、こういったことが非常に良くデザインされていると思うのです。効果音の質、タイミング、そして、それがあたかもマウスを持つ手に伝わってくるような感覚が楽しめるのです。
こういった要素がすべてうまく融合され、ひとつのゲームとしての娯楽世界が構築されていると言えるでしょう。
ふと、こういったものを販売促進にも活かせないものか、などと考えることもあります。まさに、エンタテイメントと販売促進の融合。思わず引き込まれてしまうデザイン、面白くてどんどん読んでしまう会社案内、音楽や効果音を取り入れたカタログ、さわり心地や匂いまでが伝わってきそうなパンフレット、気がついたら商品を購入していました―なんて、いいですね。

不思議な翻訳文―なぜ、外国人は友だち言葉?

「やあ、ベティー、キミはこの○○クリーナーを使ってみたことがあるかい?」「あら、トム。いいえ、まだないわ」「だったら、ぜひ使ってみたほうがいいよ」「え、どうして?そこがそんなにスゴイの?」など、輸入商品のテレビショッピングの吹き替えはたいていこんなふうに始まります。
また、外国人タレントや有名人のインタビューも、「とてもラッキーだったよ。なにしろ、ジョンが追いついてきたのが見えたからね」、「彼ったら、いきなり現れて、ボクのこと覚えてる?なんて言うの。そんなの、ずいぶん昔のことよ。わかりっこないじゃない」といった感じの字幕が流れますね。
で、常々、疑問に思うのが、外国人はなぜこういうしゃべりになってしまうのか、ということです。こういったスタイルは、マスコミ業界のデフォルトなのかもしれませんが、考えてみると、外国人(それもたいていは西洋人)たちの話す日本語表現はずっと何十年もこんな具合で来ているような気がします。そういう私自身も、かってはこんな調子で訳していたのかもしれません。それが、なんとなく定着したスタイルのような認識があったのかもしれません。
まあ、翻訳自体が間違っているわけでもないので、目くじらをたてる必要もないのですが、自分よりはるかに年も若いと思われる西洋人に、「テレビを見ているあなたも、ぜひ試してみて。効果が実感できることうけあいよ」などと言われると、「あんたにそんなに馴れ馴れしく言われる筋合いはない」などと思ってしまいます。また、「わかりっこない」だの、「うけあいよ」といった、なんとなく、むずがゆくなるような、奇をてらった言い方も気になります。
やはり、日本人にとって外国人(特に西洋人)はそれだけでカッコイイのかもしれません。カッコイイから、こういったカッコイイ(?)しゃべり方をさせるのがどことなくフィットしていて、しかも、視聴者に堂々と「友だち言葉」で話しかけられるのは西洋人だからなのかもしれません。
それに引き換え、日本人のしゃべりの控えめで丁寧なのは対照的。「ずっと膝が痛くて歩くのも辛かったんですが、この○○のおかげで、今ではずいぶん楽になりました」、「私も愛用しています。もう、手放せません」ということで、間違っても、「この○○のおかげで、すこぶる楽になったよ」とか「ボクも愛用してるんだ。もう、手放せないね」といった口調にはならないようです。
どうでもいいのですが、ちょっと気になる不思議な現象ですね。

翻訳くさい文章

最初に、翻訳くさ~いと思われる文章の例を1つ挙げてみます。
「翻訳の品質に対して考え直してみますか?もちろん、そうしましょう。もし、あなたの関心が、日本において成功するマーケティングであるならば、単語ごとの翻訳は、あなたが欲する最後のものかもしれません。」
(原文:A second thought to translation quality? Why not? If your concern is successful marketing in Japan, word-for-word translation may be the last thing you want.)
「あなたは、あなたの商品(あるいはサービス)は固いものでしかないから、あなたのビジネスはクリエイティブなライティングは必要ないと考えていますか?でも、待ってください。あなたは、あなたが英語以外の言語で言わねばならないどんなことにおいても、あなたの言うことを明確にするには、いくらかの創造性を依然として使うことができるのです。」
(原文:Do you think your business doesn’t need creative writing, because your product (or service) is just a hard stuff? But wait. You can still use some creativity in making yourself clear in whatever you have to say in a language other than English.)
いかがでしょうか?
いや、「いいんじゃない、気にならないよ」とか、「その異国の香りがいいんだ」、「これこそ舶来のアロマ」などと思われる方は、この記事をこれ以上読んでいただく必要はないでしょう(時間のムダだと思います)。人にはそれぞれ、いろんな考え方があります。こういった文章を良しとするなら、それはそれで尊重したいと思います。
しかし、このような文章を「翻訳くさい」「読みにくい」「日本語になっていない」という人も確実に存在するわけで、そういった人たちが翻訳臭さに気を取られてしまうということは、大事なメッセージを伝えるうえで、何らかの障害になっていることは否定できません。最初から読まないという人もいるかもしれません。
逆に、こんなひどい文章が実際に世の中に出回っているとは考えにくい。筆者が勝手に作ったのではないか?とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。お断りをしておきますが、この文章例は私が作りました(実際の例を挙げるわけにはいきませんので)が、こういった感じの文章をよく見かけるのも事実なのです。そして、きちんと、ホームページなどで掲載されています。
そして、もうひとつ言えることは、英語から日本語でこういうことが起こっているのなら、日本語から英語への翻訳でも同様の現象があるのではないかということです。
では、なぜ、そういった翻訳臭い文章ができあがるのか?最初からネイティブが文章を書けば「翻訳臭さ」がなくなるのか?
それは下記のサイト・ページで説明していますので、そちらをご覧ください。
http://www.rondely.com/tuben/CoreMsg3.htm

おかしな英語

日本人のヘンな英語として、Tシャツやバッグ、パッケージなどに書かれた英語の文章や表示サインのおかしな英語を集めて楽しんでいるサイトがあります。確かに日本人の英語はヘンなものが多いと思いますが、外国人の日本語もヘンですし、日本国内で出回っている英語に関しては、「余計なお世話」みたいな部分もなきにしもあらずですが、私もいちおうクリエイティブ業界の翻訳ライティングやデザインあしらい用の英文キャッチを考えたりする仕事がら、実際、どんなものが笑われているのか参考にする意味でも、たまにアクセスするサイトでもあります。
というわけで、先日も久しぶりに訪れてみました。そして、見つけたのがこれ。トイレ関連の表示説明で、なるほど、日本に来ている外国人もトイレには行く必要があるので、英文の説明があれば助かるということでしょうが、さすがにちょっとこれでは…と苦笑してしまいました。
A toilet gets down from back stone steps, and is in the inner part of a left open space.
(訳:トイレは後ろの石段を降り、左の空きスペースの中にあります)
ということで、トイレのありかを示しているのですが、この英文では、「トイレが自分から後ろの石段を降りて(移動し)、(現在)左の空きスペースの中におります」といった意味になっており、「お、ここのトイレは移動するみたいだぞ。明日はどこにいるのかな?」みたいなことになってしまいます。
それから、もう一例。「このトイレでは、ティッシュを常備しておりませんので、ご使用になる方はお買い求めください」という日本語の後に以下のような英文が…。
Because I do not have a tissue always ready in this restroom, please buy used one.
つまり、「私はこのトイレにおいて、ティッシュをいつも準備していないので、使用済みのものを買ってください」なんてことで、ここの「私」は誰を指すのか、誰か「トイレ番」がいるのかということにもなりますが、ひどいのは「使用済みのもの」(used one)という表現で、使用済みのペーパーなんてやっぱり使いたくないですね。
たぶん、この2つの例は、翻訳ソフトを使った機械翻訳ではないかと思われます。ヘンな英語を載せて楽しんでもらおうという目的なら別ですが、やはり、きちんと正しい英語を使わないとちょっと恥ずかしいかもしれません。

「クリエイティブ翻訳」の起源

「なんだね、これは!キミはこれでいいと思っているのかね!」というのは、とあるクライアントさんからの「お叱り」の言葉。いまはもう昔話になりましたが、駆け出しの頃に作成した英文カタログのリードコピー(文案)に対するクレームです。「普通の文章の羅列で、ヘッドラインにもインパクトがない」というのです。
このクライアントさんは、当時(現在はわかりませんが)は、英語版は日本語版とは独立した形で別途作成という方針を持っておられたため、文章も単なる翻訳ではなく、どちらかというと、日本語版を参考にしながらの「英語での書き起こし」になります。しかも、一般消費財ですから、いかに退屈させず読ませるか―ということが大きなポイントでもあったわけです。
大学卒業後、入社した制作会社では、ここのクライアントさんがメインのお客さまでした。そのため、英語版制作についても、単なる翻訳ではなく、英語のライティングとして作成するというユニークな考え方をしており、リライトやプルーフ・リーディングを行う英語圏のネイティブライターがオフィスに常駐していました。
こういった方法は当時でもめずらしく、「クリエイティブな英文表現スキル」が身に付くという点が大きな魅力でもありました。ちなみに、同時に就職活動をしていた別の制作会社(やはり、大手企業をメインのクライアントさんとして持っていました)では、翻訳会社に依頼した翻訳をベースにしているとのことでした。
英文コピー作成の方法としては、日本語の情報を英語でディレクションしながら、一からネイティブライターに書いてもらうというやり方と、まず、英文コピー担当者が文案を作成し、リライトあるいはチェックをネイティブに依頼するという方法がありました。私も英文コピー担当者として海外制作部門に所属していましたが、制作物の種類や内容に応じて、これらの方法を使い分けていました。
以上のような状況だったので、「クリエイティビティがない」だの、「表現に工夫がない」といった、クライアントさんからのクレームは日常茶飯事。とくに、若年の頃には、英語としてどんな表現がクリエイティブなのか、インパクトがあるのかということが、いまひとつわかりません。自分で「これはいい」と思っていても、ネイティブの感覚からすれば、全然「イケテない」のです。
なかでも、頭を悩ませたのは、ここ一番インパクトのある表現が欲しい!というときに、ネイティブの段階で普通の表現に書き直されて上がってくるということで、冒頭に掲げた例もそんな日常の一コマです。ネイティブの国籍、経験、感性によるところも多いのですが、こちらの表現力が乏しいために「意図が通じていない」ということもあったようです。
ネイティブには意図が通じない、クライアントさんからはお叱りを受ける、で両者の板ばさみ状態になることもありましたが、このような条件や環境が「クリエイティブ翻訳」が生まれた土壌となっています。

「クリエイティブ翻訳」というネーミング

「この”クリエイティブ翻訳”っていうネーミングがいいよね」とよく言われます。先日も、元同僚で、今は仕事仲間でありお客さんでもある、制作会社の担当者から連絡があって、「以前お世話になったお客さんから、また”クリエイティブ翻訳”をお願いしたいということなので、よろしくね」ということ。その仕事仲間いわく、「わかりやすいネーミングだよね」ということですが、つけた本人は、わかったようなわからんような… 通じてるのかな?というのが正直なところです。
確かに、なんでもない「クリエイティブ」という言葉と「翻訳」をくっつけただけの話なのですが、なかなか普通は結びつかない組み合わせで、それが事実、こんなキーワードの組み合わせで検索する人もほとんどいないようです(いれば、私のHPのアクセスももっと増えていることでしょう)。
しかし、普通の翻訳ではなくクリエイティブに表現した翻訳か、あるいは、クリエイティブ業界における翻訳だろう、というようなことは感覚的に伝わるようで、両方とも正しい解釈なので、これでよしとしたいと思います。
では、なぜ、「翻訳」が「クリエイティブ」なのか、ということになります。
機械翻訳や直訳は問題外として、「翻訳」という作業をどう捉えるかということになりますが、まるで、最初から相手先の言葉で書かれたかのような、翻訳を感じさせない翻訳にするためには、クリエイティブにならざるを得ないということが言えると思います。
「クリエイティブ翻訳」についての詳しい紹介は、「通弁」クリエイティブ翻訳ホームページに掲載していますので、興味のある方はどうぞ。