それぞれの言葉にオーラがあるように、言語にも独特の雰囲気があります。
たとえば、よく引き合いに出されるのが、神聖ローマ帝国のカール5世(スペインのカルロス1世)の次の言葉。
“I speak Spanish to God, Italian to women, French to men, and German to my horse. ”
(神に話しかけるときはスペイン語、女性と話すときはイタリア語、男性にはフランス語、ドイツ語は馬に対して使う)
また、誰が言ったかは不明のようですが、次のようなバージョンもあります。
“French is the language of love. English is the language of business. German is the language of war. And Spanish is the language to speak to God.”
(フランス語は愛を語る言語で、英語はビジネスの言葉。ドイツ語は戦争用の言葉で、スペイン語は神に語りかける言語である)
一昔前に流行ったフランス語もどきのジョークで、「フランス語でイカのことを何と言う?」「アシジュポン」とか、「じゃあ、お坊さんは?」「ジュズモテボンサン」などというのがありましたが、フランス語というのは、「ジュ」だの、鼻音の「ポン」や「サン」など、どことなく篭(こも)っていて、小声で「ささやく」のに適しているような雰囲気がありますね。そんなところから、愛を語り合う言語と言うのかもしれません。カール5世は、「男性に対して使う」と言っていますが、フランス語が公の場で使用されていたといった時代背景と関係がありそうです。
また、ドイツ語は、音のイメージからしても強そうで勇ましいイメージがあり、イタリア語は「ピッコロ」など小さな「ッ」のような軽快な音と「セニョリーナ」のような大らかな母音の響きが音楽を感じさせます。
スペイン語はイタリア語とは良く似た言語です。イタリア語同様、子音の後に母音が来る組み合わせが多いため、大らかな音の響きや安定感があります。しかし、軽快さやメロディーをかなでるような抑揚は少なく(特にスペインのスペイン語)、どことなく厳かな雰囲気を感じさせます。
英語は、本来はドイツ語と同源だった言語ですが、時代とともに、ドイツ語の複雑なルールをそぎ取り、フランス語などの影響も受けながら、現代風の合理的な言語として発達してきたと言えます。
このような「音」や「リズム」から受ける雰囲気もありますが、言語とは使われてこそ言語であり、文化や歴史の裏づけのない言語は生きたものとは言えません。それぞれの言語が経験してきた歴史、作り上げて来た文化というものも加味されて、言語としてのオーラが形成されるのだと考えています。
最後に、日本語はどんな言語かと言うと、個人的な見解ですが、カール5世風に表現すると、
「日本語とは、しゃべりたくないときに使う言語である。」
と言えるかもしれません。
歴史のなかで切磋琢磨されてきた「雄弁」のヨーロッパの言語と、「あうん」の呼吸で「沈黙は金」を実践してきた日本語とは、大きな違いがあると思います。その辺のところは、「通弁」ホームページで説明しています。