「ここ、スペースが空いてますね。もったいないからこの情報入れてください」
「え、でも、ここに何か入れると窮屈でゴチャゴチャした感じになってしまいます」
「何も入っていない白場のスペースにお金は払えません。入れないんだったらこの分の料金、引いてください」
極端な例ですが、パンフレットなどの印刷物を作っていると、たまにこのようなことを言われるお客さんがいらっしゃるとか。
「ですから、この白場も含めて、デザインなんです」
「デザインって、ここの、形や色がついている画像の部分だけでしょう?白場はもともとそこにあるもんだし、あなたがデザインしたものじゃないでしょう?」
どこの企業でもコストダウンが叫ばれるようになって久しいのですが、なんとかして少しでもコストを減らそう、有効に使おうという気持ちもよくわかります。しかし、白場をいかに効果的に使うかというのもデザインの一部です。
もっとも、あくまでも「効果的に」というのが重要で、1ページの左上にちょこっと小さな画像オブジェクトが入っているだけで、残りはすべて空きスペース、これで白場もデザインですというのはムリがあります(実際にこんなデザイナーもいないとは思います)が、ページ全体のバランスという意味で白場は不可欠です。
さらに言うならば、ヘッドラインや本文コピーなども視覚的にはデザインの一部であり、やはり、「白場」というものを考慮して作成・調整する必要があるのです。
そして、英文版を作成する場合、たいてい日本語版と同じデザインレイアウトを使用します。そこで大切なのが、いかにオリジナルの日本語版のデザインを損なわないかということです。それは、言い換えれば、元のデザインの白場をいかに損なわないかということに他なりません。
ところが、原文の日本語を英語に翻訳した時点で文章が長くなってしまうのが普通です。そして、レイアウトをしているデザイナーがやってきて、
「このキャッチ、日本では1行で収まっているのに、英語では3行になってるんで入りません」
となります。ここで、
「じゃ、文字小さくして長体かけてください」
「そうすると小さな文字になって、もうキャッチとは言えません」
といったやり取りが展開されるわけですが、やはり、物事には限度というものがあります。ここで必要になってくるのが、日本語に近い長さになるような表現の調整。と言うよりも、最初から「キャッチはキャッチとして」、「本文は本文として」、レイアウトをイメージしながら翻訳ライティングを進めていくことが不可欠だと考えています。
この辺のところは、「通弁」ホームページで説明しています。
https://www.rondely.com/tuben/Process2.htm