スタートレック・ディープ・スペース・ナイン (Star Trek: Deep Space Nine)

さて、このディープ・スペース・ナイン (DS9と略す) とは宇宙ステーションの名前である。他のスタートレックシリーズとは異なり、この宇宙ステーションが舞台なのだ。このステーションは、ベイジョー (Bajor) という星にある。ベイジョー人 (Bajorans) が宿敵カダシア人 (Cardassian) の長年にわたる残虐な支配から独立を勝ち取ったといういきさつがあり、このたびベイジョー政府からの依頼で、惑星連邦 (The United Federation of Planets) と共同統括することになったのである。

ちなみに、このステーションの名前は「新スタ」でもちょくちょく登場。DS9 の登場人物がエンタープライズ号 (Enterprise) にやってきたこともある。しかも、エンタープライズ号から DS9 に転属になったのがマイルズ・オブライアン (Miles O’Brien) で、彼の妻は日本人で名前はケイコ。ケイコのおばあちゃんが住んでいたのは「カマモト(たぶん熊本がなまったものか?)」らしい。そして、ステーションの責任者となるのがベンジャミン・シスコ司令官 (Commander Benjamin Sisko) 、亡くなった妻との間に一人息子のジェイク (Jake) がいる。このシスコ司令官だが、実は、「新スタ」のピカード (Jean-Luc Picard) 艦長がロキュータス (Locutus) になって(正確には改造されて)ひと暴れしていたころ、勤務していた宇宙船が攻撃され、妻を失うという悲しい過去を持っている。そのせいもあって、ピカードとは折り合いが悪いのだが、最初のエピソードでは、その悲しい過去と向き合い、立ち直る様子を描いている。

ところで、このステーションの特徴のひとつは、近くにあるワームホール (wormhole) だ。最初のエピソードで発見されるのだが、このワームホールを通ると、なんと、7万光年先のガンマ・クアドラント (Gamma Quadrant) まであっという間に行けてしまうというのだからすごい。昔、とある「ユーフォー (UFO) 研究会」のおじさんに、夜中にユー・フォーに連れられて北斗七星まで行って来た人がいるという話を聞いたことがあるが、たぶん、それよりもすごいかもしれない。ともあれ、現代のような忙しい世の中になってきたのに、宇宙の果てまでとは言わないが、「大阪から東京までこのミニワームであっという間ですわ」というくらいの技術の発展は欲しいものだ。でなければ、厳しい世の中、キツイ思いをするのは現場の人間だけである。

話はそれたが、ワームホールのすぐそばにある宇宙ステーション、旅の中継地ともあって、これまで知られていなかったガンマ区域も含め、いろんなところからいろんな宇宙人がやってくる。まず、ベイジョー人は鼻にシワがあり、耳に信仰のシンボルであるピアスをしている。カダシアンは、顔にも畝のようなシワがありなんとなく爬虫類っぽい。その他、頭が象の鼻のように伸びた人種や鼻と口がつながったようなヤカラまでさまざまだ。DS9 のレギュラーメンバーでは地球人をはじめ、ベイジョー人のキラ・ナリース (Kira Nerys)、DS9 でブティックを経営するカダシア人のガラック (Garak)。また、同じく DS9 でバーを経営しているクァーク (Quark) はファレンギ人 (Ferengi) で、「新スタ」ではもっぱら「儲けしか頭にない卑しい人種」というネガティブなイメージが強かったが、DS9 では意外とカワイイ面も見せる。また、ジャジア・ダックス (Jadzia Dax) は体内にシンビオント (symbiont) と呼ばれる共生生物を住まわせているトリル人 (Trill) 。そして、さまざまな形に姿を変えられるチェンジリン (Changeling) であるオド (Odo) もいる。

さすがに、宇宙人と言っても、人間に形が似たヒューマノイド (Humanoid) が中心であるが、それでも地球人としての我々の常識を超えた生態系や文化がおもしろい。これまでの豪華な宇宙船を取り巻く壮大さには欠けるが、多様性という意味では他のシリーズを大きくしのいでいる点がこのシリーズの最大の魅力である。異文化交流などと言われて久しいが、地球人同士でチマチマやっているスケールでないことは確かだ。「こんなヤツとどうして付き合っていくのか?」―というのは人間関係における永遠のテーマであるが、「うちの上司もこの○○人に比べたらマシだ」といった前向きな態度を培うためのヒントになるかもしれない。
下記は、DS9 のイントロ。

https://www.youtube.com/watch?v=DsOE73pxpys