アガサ・クリスティ (Agatha Christie) 原作のミステリー小説をテレビシリーズ化したものである。
ポワロ (Poirot) を演じた俳優は他にもいるが、個人的には、やはりこのデビッド・スーシェ (David Suchet) さん演じるアーキュール・ポワロ (Hercule Poirot)。いまやポワロと言えばこの人、アイコン化されていると言ってもいいだろう。
ま~るい頭にこだわりの口ひげ、キューピー人形を思わせるぽっちゃり体型、片手にステッキ、内股歩きのベルギー人探偵。作者のアガサ・クリスティによれば「自己中心的で、もったいつけた話しぶり、鼻持ちならない人物」というのが設定らしいが、それがどこか憎めないのか、どっこい人気のあるキャラクターなのである。
しかし、実際に自分のまわりにこんなオヤジがいるとすると、ちょっと付き合うにはしんどいかもしれない。ドラマの中でも、犯人を明かす場面になると、必ず、事件の関係者すべてを1つの場所に集め、推理を展開していく。というより、プレゼンテーションを行うのである。よって、決してさっさと犯人を明かすというようなことはしない。その前に、集まった関係者一人ひとりを、まるで楽しむかのように、順番に容疑者として推定してみるのである。ここで、一時的とは言え、容疑者に仕立て上げられた関係者はほとんど全員キレてしまう。
またプライドも高い。あるとき、ラジオ局の知人の依頼で推理の真相をラジオで語ることになった。いつものように、事件の関係者すべてを集め、見事な推理を展開してみせた。さぞかし聞いている人たちも感銘を受けただろうと得意顔のポワロ。さっそく、ラジオ局に聞いていた人から電話が殺到。さっそく「絶賛の声」が… と思いきや、その内容はすべて「あのヒドイ英語は何だ!」という抗議の電話。ここは英国、格調高いブリシッシュ・イングリッシュ (British English) の本場である。ベルギー(フランス語)訛りのポワロの英語は聞くに堪えなかったらしい。
普通の人ならここでシュンとしてしまうのかもしれないが、そこはこのポワロ。「ジャップ警部、あなたのことですよ!あそこで大声で汚い言葉で怒鳴ったりするから!どうしてくれるんですか!」と、たいそうな剣幕で捨て台詞を吐いてさっさと一人で行ってしまう。わかっているくせに苦しい負け惜しみ。「やれやれ」と顔を見合わせて苦笑いのヘイスティングズ (Hastings) とジャップ警部 (Chief Inspector Japp) というわけである。ドラマを観ているこちらも思わずくすっと笑ってしまう。
なるほど、憎めないキャラクターである。
下記は、ドラマを紹介するトレイラービデオ。